見積書や打ち合わせで「横持ち」と言われても、どこからどこまでの作業なのか、料金に含まれているのか分かりにくいことがあります。
横持ちとは、一般に貨物自動車運送に付帯して、積み降ろし場所から保管場所や作業場所などへ貨物を水平方向に移動させる作業を指します。
構内や近隣で行われることが多いものの、「何m以内なら横持ち」という全国共通の距離基準や、全国一律の横持ち料金はありません。
この記事では、本配送・構内移動・縦持ちとの違い、料金に影響する条件、見積書や依頼書で確認する項目を整理します。
結論|横持ちは運送に付帯する貨物の水平移動
横持ちは、トラックによる本配送そのものではなく、積込み前や取卸し後などに行われる貨物移動として使われる用語です。
現場実務では、荷降ろし場所から保管場所、搬入口から検品場所、仮置き場から使用場所などへ、貨物を水平方向に移す作業を一般に横持ちと呼びます。
横持ちかどうかは距離だけで判断せず、起点・終点・作業範囲・回数・時間・使用機材・対価を確認することが重要です。
標準貨物自動車運送約款では、横持ちと縦持ちは、荷造り、仕分け、保管、検品、棚入れなどとともに「附帯業務」の例として挙げられています。附帯業務とは、運送そのものに付随して、一定の時間、技能、機器などを必要とする業務です。
運送会社が横持ちを引き受ける場合、作業内容に応じて別に定める料金や実際に要した費用が必要になることがあります。ただし、横持ちが運賃に含まれるか、別料金になるかは、契約方式や見積条件によって異なります。
距離だけでは決まりません。「敷地内だから無料」「100m以内だから横持ち」といった全国共通の取り扱いはないため、作業範囲と料金条件を運送会社へ確認してください。
なお、港湾地区内で行われる港内搬送などの「横持ち」は、港湾運送事業法に基づく事業として扱われる場合があります。一般貨物自動車運送事業の附帯業務とは異なる整理になることがあるため、港湾での作業は受託事業者へ確認が必要です。
横持ちと本配送・構内移動・縦持ちの違い

横持ちと似た言葉には、本配送、構内移動、縦持ち、荷役があります。用語だけで判断せず、実際に行う作業を確認することが大切です。
| 用語 | 主な意味 | 主な作業例 | 判断・確認のポイント |
|---|---|---|---|
| 本配送 | 発地から着地まで貨物を運ぶ主たる運送 | 倉庫から納品先までの道路輸送 | 運送区間、車種、距離、時間指定などを確認する |
| 横持ち | 運送に付帯して行う貨物の水平方向の移動 | 荷降ろし場所から保管場所への移動 | 起点・終点・回数・時間・機材・対価を確認する |
| 構内移動 | 工場や倉庫などの敷地内で行う車両または貨物の移動 | 搬入口から別ヤードへの移動 | 横持ちを含む場合があるが、必ず同義とは限らない |
| 縦持ち | 貨物を上下方向へ移動させる作業 | 階段やエレベーターを使った別階への搬入 | 階数、搬入経路、エレベーター、作業員数を確認する |
| 荷役 | 貨物の積込みや取卸しなどの作業 | トラックへの積込み、荷台からの取卸し | 横持ちとは別の作業・料金として扱われる場合がある |
例えば、トラックの荷台から貨物を下ろす作業は「取卸し」、下ろした貨物を倉庫内の保管場所まで移す作業は「横持ち」と分けて整理される場合があります。
一方で、会社や現場によって用語の使い方が異なることもあります。見積書に「構内移動」「搬入作業」「移動作業」と記載されている場合も、作業の起点と終点を確認してください。
横持ちが発生しやすい場面
倉庫で発生する横持ち
倉庫では、トラックの荷降ろし場所と実際の保管場所が離れている場合に横持ちが発生しやすくなります。
- 荷降ろし場所から保管場所へ移動する
- 搬入口から検品場所へ移動する
- 保管場所から出荷口へ移動する
- 一時保管ヤードを経由して別の建物へ移動する
倉庫内では、通路幅、フォークリフトの使用可否、受付手順、入場時間などによって作業時間が変わります。移動距離だけでなく、移動回数と待機の有無も確認しましょう。
工場で発生する横持ち
工場では、貨物の受入場所、検品場所、製造場所、出荷場所が分かれていることがあります。
- 受入場所から製造場所へ移動する
- 検品場所から仮置き場へ移動する
- 複数棟や複数ヤードの間を移動する
- 生産工程に合わせて複数回移動する
同じ敷地内でも、入構手続きや安全確認のたびに時間がかかる場合があります。工場内の移動ルートと担当者の指示範囲を、事前に図面や写真で共有すると確認しやすくなります。
建設現場・仮置き場で発生する横持ち
建設現場では、トラックが資材の使用場所まで直接進入できない場合に横持ちが発生します。
- 進入制限のため手前で荷降ろしし、現場内へ移動する
- 仮置き場から実際の使用場所へ移動する
- 現場内の複数地点へ資材を振り分ける
- 通行導線の変更により別ルートで運ぶ
現場では、当日の立入制限や他の工事車両の状況によって搬入経路が変わることがあります。起点、終点、回数、使用機材、誘導員の要否を確認し、変更時の追加作業の扱いも決めておくことが重要です。
横持ち料金は何で決まる?
横持ち料金には全国一律の金額がありません。作業量や現場条件によって、必要な時間、人員、車両、機材が異なるためです。
料金に影響しやすい条件
- 移動距離と作業範囲
- 移動回数と往復回数
- 作業時間と待機時間
- 貨物の重量、大きさ、荷姿
- 使用する車両の種類
- フォークリフト、クレーン、パワーゲートなどの機材
- 必要な作業員数
- 階段、段差、通路幅、路面状況
- 車両の進入制限や時間帯制限
- 夜間、休日、時間指定
- 誘導員や保護具などの現場ルール
横持ち料金と待機時間料・積込料・取卸料は別
見積書では、横持ちに関係する費用が複数の項目に分かれている場合があります。
| 費目 | 主な対象 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 運賃 | 発地から着地までの運送 | 距離制・時間制などの契約方式 |
| 横持ち・附帯業務料 | 保管場所や作業場所などへの追加移動 | 起点・終点・回数・人員・機材 |
| 積込料・取卸料 | 荷台への積込み、荷台からの取卸し | 手作業か機械作業か、作業時間 |
| 待機時間料 | 荷主都合などによる待機 | 待機の開始時刻、終了時刻、発生理由 |
チャーター便で車両を貸し切っている場合でも、横持ち、荷役、長時間の待機などがすべて運賃に含まれるとは限りません。時間制運賃では一定の作業を運賃に含める契約もあるため、見積書の内訳と適用条件を確認してください。
数値で確認|30分・2時間・6項目
横持ちに全国共通の距離基準はない
横持ちについて、「何m以内」「何km以内」と定めた全国共通の距離基準はありません。構内や近隣で行われることが多くても、距離だけで横持ちかどうかを決めることはできません。
同じ100mの移動でも、1回だけフォークリフトで運ぶ場合と、重量物を複数回に分けて人手で運ぶ場合では、作業量が大きく異なります。距離とともに、回数、時間、貨物条件、機材を確認してください。
待機時間料は30分単位の参考水準がある
国土交通省の「標準的な運賃」Q&A集では、荷主都合による待機について、30分を超える場合に30分までごとに発生する待機時間料の参考水準が示されています。
| 適用時間 | 小型車 2tクラス |
中型車 4tクラス |
大型車 10tクラス |
トレーラー 20tクラス |
|---|---|---|---|---|
| 30分を超える場合に、30分までごとに発生する参考額 | 1,680円 | 1,760円 | 1,890円 | 2,220円 |
| 積込料・取卸料の適用時間と併せて2時間を超える場合に、30分までごとに発生する参考額 | 2,010円 | 2,110円 | 2,270円 | 2,670円 |
この金額は横持ち料金ではありません。
「標準的な運賃」における待機時間料の参考水準です。実際の料金は、契約方式、地域、車種、作業条件などによって異なります。時間制運賃では、契約時間内の待機時間料や積込料・取卸料を運賃に含める扱いもあるため、個別契約を確認してください。
運送契約の書面で確認する6項目
国土交通省の令和8年3月31日時点のQ&Aでは、改正後のトラック法の対象となる運送契約について、交付書面に次の6項目を記載する必要があると示されています。
| 番号 | 書面の記載事項 | 横持ちで確認する内容 |
|---|---|---|
| 1 | 運送の役務の内容・対価 | 本配送の区間、車種、運賃 |
| 2 | 荷役作業・附帯業務等の内容・対価 | 横持ちの起点、終点、回数、作業料金 |
| 3 | 特別に生じる費用に係る料金 | 有料道路料金、燃料サーチャージなど |
| 4 | 契約当事者の氏名または名称・住所 | 荷主と受託事業者を確認する |
| 5 | 運賃・料金の支払方法 | 締日、支払日、精算方法など |
| 6 | 書面の交付年月日 | いつ合意した条件かを確認する |
横持ちは、2番目の「荷役作業・附帯業務等の内容・対価」として、具体的な作業内容と対価が分かるように記載することが重要です。
交付書面の写しは、トラック法に基づく対象書面について1年間の保存が必要とされています。基本契約書、運送依頼書、送り状、単価表など複数の書面を組み合わせる場合は、どの書面が対応しているのか分かるように関連付けて保管します。
見積書・依頼書で確認する7項目

横持ちの依頼では、「横持ち一式」のような短い記載だけでなく、作業範囲と料金条件が分かるように整理します。
- 横持ちの起点
どこから移動を始めるのかを確認する - 横持ちの終点
どこまで運べば作業完了になるのかを確認する - 移動距離または作業範囲
構内、別棟、別ヤード、近隣地点などの範囲を示す - 移動回数・往復回数
複数地点への振り分けや往復の有無を確認する - 貨物の重量・寸法・荷姿
重量、大きさ、パレット、長尺物などの条件を伝える - 必要な車両・機材・人員
フォークリフト、クレーン、パワーゲート、補助作業員の要否を確認する - 待機・追加作業が発生した場合の料金
待機時間、回数増加、経路変更などの精算方法を決める
写真や構内図も共有する
言葉だけでは、荷降ろし場所と最終搬入場所の位置関係が伝わりにくい場合があります。次の資料を見積依頼に添えると、作業範囲を共有しやすくなります。
- 搬入口と搬入先の写真
- 起点と終点を示した構内図
- 車両の進入経路を示した地図
- 通路幅、段差、高さ制限が分かる写真
- 貨物の外観、荷姿、寸法が分かる資料
よくある失敗と回避方法
| よくある失敗 | 起きやすい問題 | 回避方法 |
|---|---|---|
| 距離だけを伝える | 回数や作業時間が見積条件に含まれない | 距離とともに回数、貨物条件、機材を伝える |
| 起点と終点を決めない | どこまで運ぶ契約なのか判断できない | 構内図や写真で作業範囲を示す |
| 待機や経路変更を想定しない | 当日に追加料金や再手配が発生する | 変更時の連絡先と精算方法を決めておく |
依頼書の記載例
横持ち作業:荷降ろし場所【起点】から保管場所【終点】まで。移動範囲【構内・別棟等】、回数【 回】、貨物【重量・寸法・荷姿】、使用機材【 】、待機または追加作業が発生した場合【精算方法】。
ユニック車で横持ちする場合の確認
横持ちにクレーン作業が含まれる場合は、貨物を運べるかだけでなく、安全に吊り上げて移動できるかを確認します。
- 吊り荷重量だけで車両を決めない
- 作業半径によって定格荷重が変わることを確認する
- アウトリガーを設置できるスペースを確認する
- 地盤の強度、傾斜、沈下の可能性を確認する
- 電線、建物、樹木、通行導線などの障害物を確認する
- 車検証、クレーン能力表、車両仕様書を確認する
- 貨物の位置とクレーンの設置位置を現場図で照合する
同じ2t・3tという呼び方でも、車両総重量、最大積載量、クレーン仕様、架装条件は車両ごとに異なります。実作業の可否は、使用する車両の能力表と現場条件を照合して判断してください。
2tと3tの車両選定、作業半径、アウトリガーの設置条件を整理したい場合は、【2tユニックと3tの違い】迷った時の判断軸で確認できます。
関連するトラック用語・運行情報
横持ち、荷待ち、構内作業を含む運行で、休息期間や運行管理の考え方を確認したい場合は、【トラックの分割休息】制度の概要と注意点を参照してください。
横持ちに使用する車両の荷台、フレーム、架装の土台となる構造用語を確認したい場合は、【トラックのプラットフォーム】意味と用途で整理できます。
よくある質問
トラックの横持ちとは何ですか?
横持ちとは、貨物自動車運送に付帯して、積み降ろし場所から保管場所や作業場所などへ貨物を水平方向に移動させる作業を一般に指します。作業範囲と対価は契約書や見積書で確認してください。
横持ちは何mからですか?
全国共通の「何mから」という距離基準はありません。起点・終点、作業範囲、回数、時間、使用機材などを基に、運送会社と作業内容を確認します。
横持ちと縦持ちの違いは何ですか?
横持ちは貨物を水平方向へ移動させる作業、縦持ちは階段やエレベーターなどを使って上下方向へ移動させる作業を一般に指します。
横持ちは必ず追加料金になりますか?
必ず追加料金になるとは限らず、契約や見積条件によって異なります。ただし、標準貨物自動車運送約款では横持ちは附帯業務の例に含まれるため、作業内容と対価を事前に確認することが重要です。
見積書には何を記載してもらえばよいですか?
横持ちの起点・終点、距離または範囲、回数、貨物の重量・寸法・荷姿、必要な車両・機材・人員、待機時間、追加作業時の料金を記載してもらうと確認しやすくなります。
まとめ
- 横持ちは、運送に付帯して行う貨物の水平方向の移動
- 「何m以内」という全国共通の距離基準はない
- 全国一律の横持ち料金はなく、回数、時間、貨物、機材、現場条件で変わる
- 横持ち料金、待機時間料、積込料、取卸料は別の費目になる場合がある
- 起点、終点、回数、時間、機材、対価を見積書や依頼書で確認する
- ユニック車を使う場合は、能力表と現場条件を照合する
見積を依頼する前に、横持ちの起点と終点を構内図へ記入し、移動回数、貨物条件、必要機材、待機・追加作業時の料金を運送会社と共有してください。


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